1話 槍龍に舞う
槍が振り回されてる。
雲を裂いて、突き破って、うねって、槍同士が戦っている。
さながら龍が遊んだり喧嘩しているようだ。
大波のように押し寄せては引き、弧を描いて巻き落とそうとしたり、ひつこくヘビのように絡んでくる。
「ここで試す…!」
穂先には龍の紋章があり、首に真紅の房がついた全長2メートルほどの槍は、真横に構えられ、力が貯まり大量の技を繰り出すつもりだ。
「…今日はここまでだ。」
こちらには、碧玉を吉祥結びに水色の房を下げている槍が、しゅるっと螺旋状に槍にまとわりつき、捉えた。
あっ‼︎
槍で槍を引きずられたのは、龍紋紅房の方だった。彼女は思わず叫び、両手で槍を起こして言った。
「…槍龍、ごめんね。次はもっとあなたを発揮させるからね…。」
「槍龍を泣かすなよ。槍は教練なんだから、次までに弱点を教わるんだな。」
彼はそう言って手を差し伸べた。
「…決まってるじゃない‼︎」
彼女は次の課題に目つきをハッキリさせ、立ち上がって言った。
上空から地上まで、戦っていた2人は公園に置いていた荷物をまとめている。大きめの三輪バイクも一台停めてあった。公園は川沿いにあり柳が揺れて趣ある風景だが、かなり広くて普段から人がない。
「どうしよう〜仕事のユニホームわすれた。
「龍気で飛んで戻ればいいじゃん。
「あ、そっか。
2人は幼なじみで龍紋紅房の槍使いは、王龍謝。碧玉水房の槍使いは、延至龍。共に25歳で同じ中国山東省出身だ。現在は日本で働いている。
2人は高手の槍使いであり、龍槍と言われる槍を操る選ばれし2人である。
龍槍を手にすると、封じられた龍の力で飛行、跳躍、浮遊、生命力回復、龍気の法術などが使える。
ブランコ前の高いガードに腰かけながら至龍は待った。しばらくして龍謝がリュック背負い槍を片手にふわっと舞い降りた。
龍謝は戻ってくると、槍の穂先に鞘を嵌めて柄にショルダーベルトを付けた。それを肩に立てかけ三輪バイクに乗りこみ公園を後にした。
夕方の風で柳がそよいだ。